近年は国内外を問わず、「見る」観光から「体験型」観光を求める旅行客が多いようです。例えば、普段ほっとリラックスしたいときや、お客さまをもてなすときに淹れるお茶も、お茶摘みによる体験型観光が人気を集めています。
「お茶の葉はどのように木に生えているのか」「どの部分を摘んで、どんな工程でお茶になるのか」など、実際に葉を摘み取りながら社会科見学のように楽しんではいかがでしょうか。
ここでは静岡県でお茶摘み体験できる、おすすめの4スポットを紹介します。
生産量日本一!静岡茶の魅力
静岡県はお茶の栽培面積・荒茶生産量がどちらも全国の約40%を占めており、日本一のお茶の産地です。栽培面積のみを見ても、2位の鹿児島県(8,400ヘクタール)の2倍に近い15,900ヘクタールという広さを誇っています。
出典:農林水産省「令和元年果樹及び茶栽培面積(7月15日現在)」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500215&tstat=000001013427&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001032270&tclass2=000001032271&tclass3=000001137629
日本を代表するお茶の産地であるがゆえに生産者同士の競争も激しく、人材が育ちやすい環境が整っていることが、静岡茶の味をより高めているといえます。
静岡茶の魅力
平地の多くで作られている静岡茶は深蒸しが主流です。深蒸しとは茶葉を1分~3分ほど蒸すことで、これにより渋味が少なく甘味や旨味、コクを引き出しています。
平地で作られるお茶が深蒸しになった理由は、日照時間が長いため茶葉が肉厚に育つことと、カテキンによる渋みを和らげる必要があったためです。
長く蒸すことでほかの茶葉に比べて形が短く、潰れたように見えることが特徴です。粉も多くなるため、お湯を注ぐと旨味やコクがしっかりと出ます。
一方、山間地の多くで作られている静岡茶は、伝統的な日本茶である浅蒸しが主流です。浅蒸しとは茶葉を10秒~30秒ほど蒸して作られます。
山間地で作られるお茶が浅蒸しになった理由は、日差しがそれほど強くはない地域であることと、芽が柔らかくてテアニン(うま味成分)の減少が少ないことで、長蒸しする必要が無かったためです。
蒸し時間が短いため、深蒸しと比較して葉の形状は残っています。粉が少ないので水色(すいしょく)のにごりが少ないことが特徴です。
また、静岡で有名なお茶の品種と言えば、「やぶきた」です。今では全国各地で栽培されているメジャーな品種ですが、元は静岡県で生まれました。明治末期の静岡県で発見された原樹が竹藪の北側に生えていたことから、この名がつけられました。濃厚な渋味ながら甘味があり、香気に優雅さを持つため、全国的に愛されています。
静岡茶の産地
県の公式サイト(http://www.pref.shizuoka.jp/j-no1/m_tealeaf.html)によると、静岡茶の産地は20ヶ所以上です。なかでも有名な産地は、以下の8エリアがあげられます。
・西遠…県西部に位置し、天竜川と太田川の上流周辺で上級茶葉を中心に生産
・中遠…牧之原台地の西側から天竜川の東側へ広がる産地で、深蒸し製法の発祥地
・牧之原…台地に茶畑が広がっており、日照条件の良さから濃厚な味わいの茶葉が作られる
・川根…寒暖の差が激しく、厳しい気候条件が生み出す高級煎茶が有名
・志太(しだ)…山間地にある茶園が大部分を占める。藤枝市岡部町の朝比奈川上流エリアは玉露の産地
・本山(ほんやま)…静岡市を流れる藁科川・安倍川流域の産地。静岡茶発祥の地であり、煎茶の代表的な産地
・清水…旧清水市を中心とした産地。渋味と甘味のバランスが良く、色の良い茶葉が育つ
・富士・沼津…富士山麓で駿河湾を望むように広がる茶畑で、渋味に特徴を持つ茶が多い
静岡茶の種類
お茶の種類は数多く、静岡県内でも地域の気候など特性によって栽培されているお茶は異なります。大きく3つの地域に分けると、主に栽培されているお茶は以下のとおりです。
・東部…沼津茶、富士茶、裾野茶
・中部・・本山茶、両河内茶、藤枝茶
・西部…掛川茶、小笠茶、天竜茶
地域ごとにブランドが確立されており、集落単位でより細かく産地表記をしているところもあります。同じ県内でも山間部や台地、沿岸部など地域ごとの気候の差が激しいため、多種多様なお茶を楽しめます。
お茶摘み体験ができる施設紹介
では、実際にお茶摘み体験ができるスポットをいくつかご紹介します!
日本平お茶会館【富士山が見える映えスポット】
お茶と同じく静岡県の代名詞である富士山の姿も楽しみながらお茶摘み体験したい方は、「日本平お茶会館」がおすすめです。
4月下旬から10月にかけてお茶摘み体験を開催しており、摘み取った茶葉は持ち帰りできます。10名以上の団体でお茶摘み体験を予約すると、当日お茶とお茶の葉の天ぷらを振舞ってもらえる特典つきです。
このほかに、静岡茶の直販コーナーでお茶の詰め放題も用意されています。
・料金…1人あたり600円
・受付時間…9時~15時
※事情によって変更の可能性があります
http://www.ocha-kaikan.jp/
グリンピア牧之原【茶娘衣装でなりきり茶摘み】
本格的な茶摘み気分を味わいたい方は、茶娘衣装を着て茶摘み体験ができる「グリンピア牧之原」はいかがでしょうか。こちらも4月から10月にかけて茶摘み体験を受け付けていますが、期間中毎日ではなく開催日が設定されている点に注意してください。また、茶摘み衣装のレンタルは予約が必要です。
同敷地内の工場では、茶葉が加工されて袋詰めされるまでの工程を無料で見学可能です。ほうじ茶の製造過程も見学できるほか、直売店で購入もできます。
・料金…1人あたり820円(小学生720円)
・受付時間…11時~(土日は11時~・14時~の2回開催)
※事情によって変更の可能性があります
http://www.grinpia.com/
ふじのくに茶の都ミュージアム【静岡茶の博物館】
茶摘み体験やお茶の直売だけではない、さまざまなコンテンツを楽しみたいときは「ふじのくに茶の都ミュージアム」をおすすめします。
お茶に関するあらゆることを学べるだけでなく、企画展が定期的に開催されており、歴史や文化、産業など、さまざまな視点でお茶について知ることができる施設です。
なお、お茶摘み体験は、当日ミュージアム受付で専用チケットを購入すれば参加できるため、予約は必要ありません。ただし、定員があります。
・料金…1人あたり500円(別途観覧料が300円必要)
・受付時間…10時~・11時~・13時~・14時~(平日は異なります)
※事情によって変更の可能性があります
https://tea-museum.jp/
体験型古民家宿 旅ノ舎【世界農業遺産で茶摘み体験】
お茶摘み以外も静岡県のアクティビティを楽しみたい方は、「体験型古民家宿 旅ノ舎」への宿泊を検討してみてはいかがでしょうか。世界農業遺産である茶草場農法による茶畑と、豊かな自然に触れることができます。
日帰りのお茶摘み体験のほか、お茶農家を改装した民宿での宿泊体験つきプラン、季節の味覚を収穫して味わうプランなどが用意されており、古民家暮らしを体験できます。
・料金…プランによって異なる
・受付時間…プランによって異なる
※事情によって変更の可能性があります
https://www.tabinoya-oldjapanese.com/
お茶摘みの注意点
お茶摘み体験に参加するときは、ケガやトラブルの原因となるため、以下の点に注意しましょう。
・靴下と運動靴を着用し、素足・サンダル・ヒールなどは避ける
・虫刺されなどを防ぐため、長袖の服を着用
・茶娘衣装体験の場合、Tシャツ持参が必要となる場合がある
・香りが強いものは身に付けない
・新芽に付着する可能性があるもの(ハンドクリームなど)を避ける
施設ごとに体験申し込み方法や料金が異なるように、注意点もさまざまです。必ず参加を予定している施設の注意書きを確認し、指示に従ったうえでお茶摘み体験を楽しみましょう。
まとめ
静岡に遊びに来たら、ぜひお茶摘みを体験してみてください。茶娘衣装や富士山など、お茶を通じて静岡の文化に触れることができます。
静岡県はお茶の産地として日本一の生産量や栽培面積を誇ります。県内各地にはお茶に関係する施設が多く、イベントが盛んに開催されています。とくにお茶摘み体験は、静岡茶をより身近に感じることができるイベントのひとつでしょう。
お茶摘み体験を希望する方は、各施設のルールをよく理解したうえで申し込みましょう。また、なかには開催日を限定している施設もあるため、予約が不要な場合でも公式サイトなどの事前確認をすることをおすすめします。